
■ 今北産業|忙しい人のための「3行要約」
- 公共工事の入札不調や不透明な発注が相次ぐ根本原因は、実態から乖離した積算を行う行政の どんぶり勘定 と、自前で要件定義や設計ができない発注者側の能力不足にある。
- 建設業界では資材高騰や施工難易度を無視した単価設定で 逆ザヤ による入札不調が起きる一方、IT等のソフト事業では財政査定を見越した水増し見積もりで予算が過剰に膨らむ歪みが生じている。
- 過少見積もりによるインフラ整備の遅れや、前年度の 予算用見積もり の段階で自社有利な仕様を滑り込ませる営業ハックなど、制度の隙を突くBtoG(行政向けビジネス)のリアルな力学を知るべきだ。
世間一般では「行政絡みの仕事=安定して利益が出る美味しい案件」というイメージが根強い。
しかし近年、建設現場では入札不調が相次ぎ、一方でシステム導入などのソフト面では不透明な予算取りが常態化している。
果たして今の公共案件は本当に「美味しい」のか。
今回は、記者(gu)、ゼネコン(ohagi)、そして行政(osaka551)の給湯室での会話から、ハードとソフトの両面にはびこる「どんぶり勘定」のリアルを紐解く。
1.行政の公共案件は本当に「美味しい」のか?

◎ 本日の起案者
gu │メディア
/ 業界紙記者
行政絡みの仕事はしっかり利益を稼げるイメージが強い。
ただ、近年になって資材等コストが急騰した建設案件は、業者にとって逆ザヤ状態(受注額を原価が上回る赤字状態)となり、入札不調となるケースが目立つ。
一癖ある行政にすり寄るメリットは今後もあるのか?
これから事業費の見積額水準が全国的に見直されるかに注目が集まるが、実際の現場はどう見ている?
2.各業界のリアル:ゼネコンと行政の「どんぶり勘定」

ohagi │ゼネコン
/ スーパーゼネコンの中間管理職
guの見立て通りで合ってる。
公共工事で予定額が足りないのは今に始まったことじゃないけど、近年は入札金額と予算の乖離が大きくなったなと感じる。
発注者や設計事務所は、付き合いのある協力会社に適当に見積もりを出させたり、物価本から単価を引っ張ってくることが多くて正確性に乏しい。
昨今の資材費高騰に対しても、「これくらいじゃない?」っていう想像で数字を入れているとしか思えない物件も多いね。
しかも最近は形が変な(複雑な)物件が増えて、難易度が跳ね上がっているのに簡単な物件の単価が適用されて、結果的に予算を超過して不調になる。
地域のシンボルになるような物件なら利益が薄くても取りに行くことはあるけど、基本的には適正な利益が確保できなければ動けないのが実情だね。

osaka551 │行政
/ 行政10年以上経験
建設工事…とは異なってしまうけど、システム導入や業務委託とかの「ソフト系の事業」に関しては、行政特有のどんぶり勘定が業者にとって美味しい案件を生み出している側面がある。
行政がソフト系の新しい事業をやる場合、前年度の段階でベンダーとか日ごろやりとりしてる事業者に「予算用の見積もり」を依頼することが多い。自分たちで設計できないからね。
この「予算用の見積もり」っていう言葉の裏には、あとから財政部署のキツい査定で削られることを見越した、担当者と業者間の暗黙の了解が存在してるのは知ってるよね。
行政側はその見積もりをそのまま設計書として添付して、予算要求に回すんだけど、結果として、実際のコストよりも余裕のある予算がつくことが少なくない。
「これこんなかからないだろ」って見てて思うこともある。
ただし、いくら予算を多く確保できたとしても、一定の金額要件を超えれば原則として競争入札にかけられて、基本的にはガチンコの価格勝負になるから、タダで「予算用の見積もり」作成に協力した事業者が普通に入札で負けるっていう、誰も得をしないヘンテコな構造も珍しくない。
3.【総括/guの私見】どんぶり勘定のなにがそんなに悪いのか?

◎ 本日の起案者
gu │メディア
/ 業界紙記者
そもそもこの問題ってosakaが言うとおり「行政の見積もりがどんぶり過ぎる」のが根本にあると思うんだけど、その先には2つの避けるべき事態が見える。
一つは見積もりが安い場合に起こることで、必要な工事なり情報インフラの整備が手遅れになって市民が困ること。
もう一つは見積もりが高すぎる場合で、民間で談合されるとそのまま美味すぎる蜜を一部の企業が吸う=市民の血税が不当に使われる危険性。
上記の2つの可能性はあくまで外様の僕の見方だから、もしかしたら的外れかもしないけど、「行政の見積もりがどんぶり勘定なのがなぜ悪いのか?」という問いにこそ、問題の本質があるように思った。
以上です。

【こぼれ話】
osaka551 │行政
/ 行政10年以上経験
もしその、どんぶり勘定の設計書のなかに、さりげなく「見積もりを作ったその会社だけが極端に安く提示できる項目」が紛れ込んでいたらどうなるか。
入札の結果は火を見るより明らかだよね。
プロポーザル(コンペ)ならよくある手法だけど、価格勝負の『競争入札』の仕様書にこれを組み込むのは至難の業。他社からツッコミが入らない絶妙なラインを突く必要があるからね。
もし行政職員もわかってやってたら、質問期間の心中は穏やかじゃないと思うよ。
ズルいハックのように聞こえるかもしれないけど、競争入札でこれをやってのける営業は本当にすごい。
いかに前年度の段階で担当者の懐に入り込んで、自社が絶対に勝てる仕様を『予算用見積もり』と一緒に滑り込ませるか。
長い目で見て担当者としっかりとした関係作りができる営業は、この界隈では強いよね。
※本記事のディスカッション内容は、各業界の現場の声をもとに構成したものであり、特定の実在する企業・団体を指すものではありません。


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